胆石のお話

 胆石と一口に言いましても、総胆管という肝臓と十二指腸をつなぐ管の中にできる石と、その総胆管に付いていて胆汁を貯めている胆嚢の中にできる石とがあります。総胆管の中に石ができると、胆汁の流れを悪くするために痛みも起こしますが、有名なのは黄疸で白目のところや皮膚が黄色になります。

 また肝臓に負担を掛けて肝臓機能障害、ひいては肝炎を起こすこともあります。胆嚢に石がある場合には、黄疸などは起こしにくいのですが、胆嚢炎を併発してくると強い痛みを起こします。昔から「癪(シャク)の痛み」と言われるもので、右の脇腹からみぞおちが差し込まれるように痛みます。昔の時代劇などで、道ばたで旅姿の女の人がお腹を抱えてうずくまっているところへ主人公がやってくる、などという場面はこの「癪の痛み」というわけです。 男女比は、約2対1と女性に多く、劇中でも女性が倒れる役が多いのも頷けます。

 胆石はできる場所がいずれの場合も、病気としては良性ですが治療をしないで放置しておくと、痛むだけでなく化膿して敗血症を起こし生命の危険に晒されることさえあります。とくに総胆管内に膿が溜まり肝臓内に逆流しますと、肝臓は血管の固まりのような臓器ですから簡単に膿が血液の中に入り込んで敗血症を起こしてしまいます。こうした状態になりますと急性化膿性胆管炎と診断され、死亡率が約80%ともいわれており大変危険な状態となります。また、胆嚢が化膿して膿の袋になってしまいますと、ことは胆嚢だけで収まらず、腹膜炎を起こしてしまいます。これもまた大変危険な状態と言わざるを得ません。何事も油断は禁物といったところです。

 さて治療ですが、いずれにしても手術が必要で、薬で石を溶かすことは考えない方がいいでしょう。実際薬で溶けたという話は聞いたことがありません。また、超音波で石を壊して粉々にして流す、ということを仰る患者様もみえますが、腎臓や尿管の結石とは別にして、胆石ではまず考えない方がいいようです。中途半端に砕けた石の破片がかえって胆嚢管という胆嚢と総胆管を結ぶ管や総胆管自体を詰まらせ、黄疸をおこすリスクがあるからです。

 最近では、胆嚢に関しては、お腹を大きく切り開かないで小さな傷で取ってくる腹腔鏡下胆嚢摘出術という方法があります。これは次の欄で詳しくご紹介しましょう。まさに奇想天外といった手術術式で、外科手術の「常識」を覆したものです。

 また総胆管に対しては、手術で大きくお腹を切り開いて石を取り出すことが標準ですが、石が小さい場合や患者様の状態によっては内視鏡を用いて総胆管の出口(十二指腸に開口しており、ファーター乳頭と呼ばれています)を切り開いて、さらにバスケット鉗子という網のような道具を総胆管内に挿入して石を取り出す方法があります。これは、敗血症を起こしかけているような状態が悪い場合には、総胆管内の膿を排出することにもなり、まさに劇的な効果をもたらす事があります。また、あとで述べる腹腔鏡下胆嚢摘出術と組み合わせると、大きくお腹を切り開くことなく胆嚢と総胆管両方の石を取り除くことが可能になります。実際、昨年は数例の方に実施して、入院日数の短縮と痛みの軽減に役立ちました。

 最近は健診を受ける方が増えてきており、また腹部超音波検査(一般にエコー検査と呼ばれています)の普及によって、簡単に無症状の胆石が見つかるようになってきています。石があっても全く無症状なら良いのですが、通常石が見つかってから1、2年の間に症状が出て来るという論文もみられます。胆石の症状といいますと、腹痛だけではなく肩こりや腰痛などもあり、長い間胆石に気づかずに整形外科やマッサージに通っている方もあるようです。もし健診などで胆石を指摘された方や、頑固な肩こりや腰痛があって整形外科でも原因がはっきりしないような方がおられましたら、一度寺田病院の扉を叩いてみて下さい。胆石の有り無しから、治療方法などご相談に乗れると思います。ご遠慮なくご相談下さい。

 手術になった場合の入院期間ですが、通常の手術で3から4週間を、また腹腔鏡下胆嚢摘出術ですと10日前後をお願いしています。入院の際には「患者様用クリニカルパス」という簡単な日程表をお渡しして入院中のスケジュールをあらかじめご説明しています。

 私たち寺田病院はあなたの胆嚢の味方です。

 当院の院長、副院長は「日本消化器外科学会指導医」の認定を戴いています。

 以上、「胆石のお話」でした。皆様の健康を願います。