禁煙について(タバコのにおいについて)

遠藤 彰

 最近は色々なところで、禁煙についての活発な議論がなされています。今回は、私が患者様と接している中での禁煙について少し書かせていただきます。

 当院は、胃腸科が主体の病院です。手術は年間約400件行なっていて、手術を機に禁煙される患者様がおられます。私の場合、10人にお話して、2〜3人の方がそのまま禁煙に成功されています。これが現実です。慣れ親しんだ嗜好を変化させるのはなかなか難しく、とても強い勇気がいると思います。でも、禁煙に成功した人は全員、やめてよかったと言われています。やめてダメになったと言われた人はいません。

 禁煙して、朝の咳き込みがなくなった、ご飯がおいしくなったと多くの方が話してくれます。食事がすすむために体重が増えます。太ったことを心配される声も聞かれますが、食事がおいしくなった証ではないでしょうか。食事がおいしくなったことは、健康になったといえると思います。

 私の元上司の話ですが、一日30本30年間の喫煙歴でした。自分で止めると言い出しましたが周囲はまったく信用していませんでした。ところが、周囲の予想に反して、きっぱりとタバコを止めてしまいました。本人は強い意志があればできると言っております。上司の奥様の話では、食事の量が増えていると言われていました。一番うれしいことは、家の中の空気がきれいになったことだとも話してくれました。

 また、ある患者様の自宅では、小学生のお子さんが学校から帰宅した時、玄関に入ったとたん”タバコのにおい”でお父さんがいるかどうかわかったそうです。禁煙してからはそのにおいがなくなったとも言われています。

 タバコが害であることは、事実です。その中で一番悪いのは副流煙といって喫煙者本人ではなく周りの人へ影響を与えるものです。タバコのにおいは、喫煙者よりも周りの人が気になります。

 タバコのにおいを感じるということは周囲へ何らかの影響を与えているのです。

 最近は、禁煙化がすすんで、公共施設の多くでは喫煙することも容易ではなくなっています。禁煙するのは、実際に体調が悪くなってからだとか、禁煙すると楽しみがなくなるとか言わないで、この文章を読んだことをきっかけにして、さっそく一度禁煙にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。