痔ろう(あな痔)

 硬い便や下痢などで歯状線付近に傷が付き細菌が肛門小窩と言うくぼみからここに開口している肛門線に入り、内外括約筋間に感染巣が形成され、炎症が解剖学的構造上の隙間に沿って様々な方向に波及して膿瘍を生じてきます。これが肛門周囲膿瘍で、これが排膿されて瘻孔を形成したものを痔瘻と呼んでいます(肛門小窩・肛門腺感染説)。

痔ろうの図画像

症状

肛門周囲膿瘍 肛門付近が硬くなり、排便とは関係なく痛みます。ひどくなると赤く腫れ発熱を伴うこともあります。
痔瘻 膿が自然排泄(「自潰した」と言います)すると一旦症状は和らぎ痛みも消失しますが、これで痔瘻が完成したことになります。その後も時々炎症を起こし、肛門付近が硬くなり痛みが出たり発熱をきたすことがありますが、自潰して膿が出ると軽快します。これを繰り返すうちに瘻孔が肛門周囲を取り囲むように伸びていき瘻孔が複雑化します。複雑化すればそれだけ治療もやっかいで時間も掛かります。

治療

 原則は手術です。膿瘍期には、一旦切開排膿処置を行って腫れをひかせてから根治手術を行いたいところです。膿瘍が小さい場合には、一度に根治術も行うこともあります。根治術に際しては、肛門括約筋を傷つけ後遺症を起こさぬように注意が必要で、状況によっては2回に分けて手術を行う場合もでてきます。入院期間は、状態にもよりますが、一般的には痔核の手術より長く掛かり、2〜3週間が目安です。なお、痔疾患の中で治療後の再発のリスクは痔瘻とくに複雑痔瘻の場合に多いのが現状です。