胃癌のお話

 胃癌は、日本では癌の中でも1位の座を占める癌で、最もポピュラーな癌と言えます。古い資料ですが、我が国で1990年に癌で亡くなった方は、218000人弱となっています。
1万人の交通事故死者で「交通戦争」と言うのなら、まさに「癌戦争」と言わなければなりません。とくに癌での死亡は、40歳代、50歳代といったまさに働き盛りの年代に多くなっており、これが癌の恐ろしさでもあります。また、少し古いデータですが、胃癌は癌全体での死亡の22.7%と約5分の1を占めている日本人にとって重大な癌と言えます。

 さて、こうした胃癌に対して、当院では27年前の開設以来積極的に取り組んで参りました。現在では、予防としての「健診」をはじめとして、レントゲン検査や内視鏡検査による胃癌の早期発見に努め、発見された胃癌に対してはそれぞれの進行度に合わせて、患者様やご家族の方々と相談の上、いわゆるオーダーメイド治療に取り組んでいます。

 具体的には、早期で「切らなくていい癌」に対しては内視鏡的切除術を、また「切って治る癌」には適切な郭清(リンパ節など周辺への癌の広がりを併せて切除します)を伴う根治手術を、また「切っても治らない時期の癌」には、それぞれの状態に応じた姑息的手術(食べられるように胃と腸をつないだりします)や抗ガン剤による化学療法を行います。

 全ては患者様の健康と生きる活力を取り戻していただくための手段と考え、最善の方法をご一緒に考えて実行しています。
 なお、内視鏡的な切除術の場合には約1週間の、また通常の胃切除術の場合には4から5週間の入院をお願いしています。入院に際しては、「患者様用クリニカルパス」という簡単な日程表をお渡しして、入院中のスケジュールをご説明しています。

 参考に、当院の最近10年間での胃癌手術症例411例での5年生存率を示します。これは毎年40人以上の胃癌患者様を手術していることになります。

5年生存率

初期 ステージⅠa 95.5%
ステージⅠb 97.9%
中期 ステージⅡ 61.5%
ステージⅢa 48.6%
後期 ステージⅢb 11.8%
ステージⅣ 24.7%
ALL 76.1%

 最後の数字は検討した全ての患者様での成績です。つまり、胃癌で手術を受けた患者様の4人に3人以上の方々が手術後5年以上健康に暮らして居られるわけです。これは、癌以外でお亡くなりになった場合を含んでおり、最近日本胃癌学会が発表した全国有数の癌治療施設の成績と比べても遜色のないものと自負しています。


 以上、「胃癌のお話」でした。皆様のご健康を願います。